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 2005年9月 執筆前夜
キングオブコメディ さんインタビュー (全4回)
取材・文/小山田桐子 撮影/石原敦志
第1回

 ゼロからひとつの世界を作り上げるクリエイターの創作の秘密に迫るインタビュー。これまで、作家、映画監督、脚本家、漫画家と様々なジャンルのクリエイターに話をうかがってきたが、今回登場するのはなんとお笑い芸人、キングオブコメディ。本年度のホープ大賞も受賞し、今最も注目されるコンビといえる彼ら。突き抜けたキャラクターで観客を翻弄する今野のボケと、俯きがちに発せられる、ボヤキとも言える味わいの高橋のツッコミが生み出す彼らの笑いは、スリリングで、目が離せない。笑いというもっともデリケートな難題に挑み続ける彼らの魅力に迫るインタビュー。第一回は、子供時代の彼らについてうかがいながら、その笑いのルーツを探る。

 子供の頃、今野さんは通信簿にどんなことを書かれるような子でしたか?

今野:
 “大人しい”ですかね。友達もほとんどいなかったし。あ、でも、小学校1、2年生の頃は、よく先生に怒られてた気もするんですよね。机の上でフルチンで踊ってたりしてたらしいんですよ。全く記憶はないんですけど。


高橋:
 大人しいっていうのはなんとなく分かるよ。


今野:
 だけど、親から伝えられる子供の俺って、大人しいという形容が当てはまらないんだよね。


高橋:
 まあ、俺が聞いてる範囲でもおかしい点はあるからね。夏休みの自由研究だっていって、プラバンを適当にセロテープで張り合わせて、おしっこを便所まで導く、ウォータースライダー的なものを作って親にすげー怒られたんでしょ。セロテープで留めてるからびちゃびちゃ漏れてきて、親にすぐ捨てられたっていう。


今野:
 いや、俺が捨てたよ。


高橋:
 その判断はできたんだ。大体、どうしてそんなものを作ろうと考えたの。


今野:
 だって、自由研究だから。


高橋:
 まあ、自由な研究だけれども。


今野:
 自由研究だから、何を言われる筋合いもないよ。


高橋:
 でも親に怒られたんでしょ。俺も、将来父親になって、子供がそれやったら怒ると思うよ。


今野:
 そういう教育は違うでしょう。


高橋:
 だって、子供がおしっこ臭いものを学校に持っていったら絶対いじめられたりするじゃない。だから、創作意欲については褒めてあげるけど、絶対、よそでやっちゃダメって言うよ。


今野:
 ダメだよ、そういう臭いものにフタ的な考えは。


高橋:
 だって、本当に臭いものだしさ。


 まさか、教育論になるとは(笑)。では、高橋さんの子供時代はどうだったんでしょうか?

高橋:
 食欲があんまりない子でしたね。たくさん食べるのがある種のステイタスだという下町気味の町で育ったこともあって、お弁当の時間が本当に嫌で。今でも、たまに、銀紙でくるんであって、のりの湿ったおにぎりとか、ご飯に油が染みこんでるのを見たり、ピーマンとか卵焼きとかいろんな匂いが一体化したものを嗅ぐと、苦しいような、その頃の淡い気持ちが浮かび上がりますね。


今野:
 よく言うよね、弁当食うと悲しくなるって。


高橋:
 まず食べ物が飲み込めなかったの。とにかくご飯の時に飲み物を飲むって発想がなかったんだよね。だから、喉につまっても、苦しむしか術がなかった。そういう時、飲み物を飲むと、楽になるんだっていうのを、二十歳過ぎになって発見したよね。


今野:
 え、それまで、分からなかったの?


高橋:
 分からなかった。だから、パンなんかほんと苦手で。当時は先生に、「パン残していいですか」っていちいち断らなきゃいけなくて、それもすごい嫌だったな。


今野:
 子供って意味の分からないところで変なプレッシャーを感じるよね。


高橋:
 そう、今考えると、なんでそんなことが苦しかったのってことがたくさんある。小学校の時ってものすごく発育の差があると思うんですけど、僕は食べるのも遅いし、足も遅いし、勉強も出来ないし、人前で何かすることも出来なかった。そういうことがコンプレックスだったとまでは言わないけど、小学校の時の記憶として残ってますね。


 人を笑わせようと思った最初の記憶ってありますか?

今野:
 あります。小学校三年生の授業参観の時なんですけど、人を急に笑わせたいと思ったんですよ。授業中にチャイムが鳴ると、先生って黙るじゃないですか。その時、突然言ったんですよ、「なんで静かになるの」って。


高橋:
 ウケた?


今野:
 ウケたねえ。保護者も笑ってたよ。


高橋:
 その場の空気を感じとったんだね。


今野:
 保護者会みたいな時に、PTAの役員だったうちの親が「今野さん」って呼ばれた時に、「あ、はい」って返事したり。そのふたつをすごく鮮明に覚えてますね。


高橋:
 後者はなんかあざとくて嫌だな(笑)。でも、そういう学校の空気が変わる時に、わざといつもの感じを出して困らせてやろうっていう気持ちは分かる気がする。


今野:
 いつも騒いでる子たちがゼロになる今が出時だと(笑)。


高橋:
 俺も、笑わせたいっていう意思は、多分すごいあったと思いますね。今考えれば笑わせようとしてたんじゃないかと思うのは、人の揚げ足を取るという行為。小学校の高学年の時に、それを人に指摘されたの。余計なことを言うよな、みたいな感じで。そう言われた時に、人は揚げ足を取られると、嫌がるんだってちょっと驚きましたね。本当に無邪気によかれと思って、言っていた部分があったんだよね。


今野:
 そういえば、俺も子供の頃、親に揚げ足ばっかりとらないのってめちゃくちゃ怒られてた記憶があるな。


 “揚げ足取り” というのが、お二人の笑いのルーツにあるのかもしれないですね。今も、テンションで笑わせるというタイプのコンビではないですけど、子供の頃もふざけて笑わせるタイプではなかったんですね。

今野:
 当時から、クラスの人気者がいると、あれは違うな、と思ってました。面白いじゃなくて、楽しいだなって。


高橋:
 ダウンタウンの松本さんの本を読んで、自分は違うって勘違いしちゃうタイプだよ。


今野:
 だから、今、そういう奴を見返そうみたいなのは、ありますね。お前は楽しかっただけだぞ、って。


高橋:
 ものすごい格好悪いよ(笑)。とにかく、今思えば、笑わせると言っても、人が和むような滑稽なことじゃなくて、人が嫌がることをしていた気はしますね。今、おならをして、人が臭がってるのとかすごくうれしいのは、その延長なんだろうなって。


今野:
 延長なんだろうな、じゃないよ。


 次回では、実際に芸人として活動するまでをお聞きします。

第2回

 第2回は、ふたりが出会い、コンビを組むまでを聞く。

 ふたりは現在所属する事務所・人力舎の養成所であるスクールJCAの同期として知り合うわけですが、それぞれどういうきっかけでJCAに入ったんですか?

今野:
 小学校3年の授業参観を機に笑いに目覚めたって言いましたけど、小4の時の文集にコメディアンになりたいって書いたんですよ。文集に、アイドルとか役者になりたいって書く子はいっぱいいるけど、大抵の人はなれない。そんな夢を忘れて敷かれたレールに乗っていくわけですよ。僕はそうはなりたくない、と思って。


高橋:
 ビルの屋上から下を見て、俺はあんなアリンコみたいな奴になりたくないと思ったっていう吉田栄作の考え方だ。人がアリンコみたいに見えたのは、単純に遠近感の問題じゃないかっていう、あの発想でしょ。


今野:
 夢が本当になったらかっこいんじゃないかと思って。でも、とにかくまず、芸人になる方法が分からなかったの。それで、先生に、オーディション雑誌に載っていたスクールJCAを教えてもらって。で、その時のただ一人の友達と一緒に入ったんですけど、まあ、知らないことだらけですよ。


高橋:
 「ひょうきん族」とか「ごっつええ感じ」とかテレビのお笑いのイメージしかなかったから、ライブでネタをやるっていう時に、「え、セットは?」って思ったらしいですよ(笑)。


今野:
 舞台に何もない意味が分からない。


高橋:
 小劇場のライブでは、パイプ椅子とか長机でなんでも表現したりするっていうことがとにかく信じられなかったみたいですね。


 では、高橋さんがスクールJCAに入ったきっかけは?

高橋:
 漫才ブームとか見てお笑いをやりたいと思ったんですけど、やっぱり僕もどうやったらできるのかが分からなくて。弟子入りするしかないものだと思ってましたね。で、ある時、歩いていたら、たまたま専門学校の説明会をやっていて、その中のひとつが人力舎だったんです。他は必死に勧誘してるのに、スクールJCAの人だけ暇そうにずっとガムを噛んでたんですよ。で、目があって、「お笑い興味あるの」って言われて、人力舎のチケットをもらったんです。そこでスクールJCAのことを知らなければ、多分、お笑いをやりたい気持ちを持ち続けながらも、何もしなかったと思いますね。


今野:
 そのガム噛んでた人、人力舎の魅力が全面に出てるね。


高橋:
 メジャーリーガーみたいな人だったからね。人と話してる時もずっとガムを噛んでるんですよ。すごいいい加減そうだったんでいいな、と。それで、入ってみたら、本当に普通の人たちがたくさんいて、これだったら、自分でもできるんじゃないか、と思いましたね。そう言うと大それた感じですけど、挑戦してみる資格ぐらいはあるのかな、と。裸で歩いてるような人とか、頭からプリンかぶってる人がいるんじゃないか、ぐらいに思っていたので、普通の人でも門前払いはないんだな、と安心した覚えがあります。


 スクールJCAの授業で印象的なものなどはありますか。

今野:
 タップダンスの授業があるんですよ。確かにリズム感を養うのにはいいかなと思って出てたんですけど、講師の人がどんどん難易度を上げるんですよ。


高橋:
 ステップ5とか、もう溜息が出るぐらいの動きなんですよ(笑)。


今野:
 リズム感養うだけだったら、そんなに上手くなる必要ないじゃないかと。


高橋:
 でも、今思えば、全ての授業が役に立ってますね。具体的に何が身に付いたということがない授業でも、人の前で何かやるってことの訓練になったと思いますし。


 在学中はまだふたりはコンビを組んでいなかったんですよね。

高橋:
 僕は違う相方と漫才やってましたし、こっちはまた別の相方と組んでましたね。で、途中でお互い解散して、また別々でやってたんですよ。僕がピンで、今野はまた違う相方とゲットスマイルズというコンビを組んで。


 コンビを組む前から、そもそも仲はよかったんですか。

今野:
 あんまり覚えてないんですよね。


高橋:
 お前、基本的に昔のことを覚えてないよな。記憶の絶対量が人より少ない気がする。


今野:
 もう、過去はどうでもいいんですよ。


高橋:
 想い出的な部分に記憶のメモリーを使わないよね。結構、ネタとかでは、びっくりするようなことまで覚えてたりするのに。


今野:
 脳のキャパって決まってるから、いらない記憶はどんどん排除していかないと。親しくなった最初の記憶ということで言えば、やっぱディズニーランドじゃない?


 え、ディズニーランドに一緒に行くって、かなりの親しさを表す行為だと思うんですが。

高橋:
 まあまあ親しいっていうぐらいの時に、あえて、いきなりディズニーランド行ってみようっていうことで、二人で行きました。しかも、夕方5時ぐらいに入って、フリーパス買って、2時間無理矢理いろんなもの乗ってましたね。


今野:
 元を取ろうと必死でしたね。


高橋:
 コーヒーカップとかダンボとかも乗って。


 ちょっとしたデートですね。

高橋:
 最初はそのふざけた感じが面白かったんですけど、純粋に段々乗り物が面白くなってきて、普通に満足して帰ってきました。


 そして、卒業後しばらくしてから、コンビを組んだわけですけど、結成当初のことは覚えていますか?

今野:
 二回目のネタみせの時に、超怒られたんですよ。


高橋:
 ネタとは直接関係ないことだったんですけど、めちゃくちゃ俺が怒られて。すぐ土下座しましたね。


今野:
 あれは、未だに覚えてる。ほんと流れるような動作だった。


高橋:
 俺は、コンビ別れまでしてもらって今野と組んだわけですよ。言ってみれば、寝取ったようなものじゃないですか。なのに、俺のせいで事務所をクビになったりしたら、今野にもその元相方にも悪いって思って、これは土下座しかない、と。だから、土下座ありきのキングオブコメディですよ。


今野:
 初めてみたよ、本気土下座。


高橋:
 波乱の幕開けでしたね。


 次回は、キングオブコメディのコントの作り方に迫ります。

第3回

 第3回は彼らの活動についてうかがう

 以前は、高橋さんが突然投げかけた質問に今野さんがアドリブで答えるという方法でコントを作っていたと思うんですが、それは今も変わらないんですか?

高橋:
 若干変わってきてますね。前はほんとに、「すいません、ハンバーグ定食お願いします」って僕が言ったことに、今野が適当に答えて、そのやり取りをメモしていくという作り方だったんですけど、それだと無駄が多いんですよ。結局、その中から本当に使えるものを絞っていかなきゃいけないので。それで、効率を良くする意味でも、こうきたらこういう展開って、以前より少しガイドを決めて作るようになりました。


今野:
 あとは、ある程度ネタを作ってきちゃっているんで、とにかく、これまでに作ったものに似ないように、避けて作っているという感じです。


 お二人は毎年年明けに単独ライブを行っていますが、どれぐらい前から準備を始めるんですか。

高橋:
 ある意味、一年前ですね。


今野:
 意識としてはね。


高橋:
 常に、手持ちのネタを最低限お客が文句を言わない程度のレベルにまで手直しすることを考えてます。


今野:
 文句を言われたら終わりだからね。


高橋:
 単独ライブはとにかくネタの数を揃えるのが大変なんですよ。だから、とりあえず、一軍の数をキープしておいて、二軍の選手を鍛えて成績が良ければ入れ替えていくっていう感じでやってますね。


今野:
 二軍にいったものが次のライブあたりで、育ってきたりすることもありますし。


高橋:
 まあ、そのまま辞めて普通にバイト生活に戻っていくやつもいますけど。


 日の目をみないものもあると(笑)。最近ではテレビでもネタを見る機会が増えましたが、ライブではテレビでは流せないような、かなりキワドイ言葉も使われていますよね。

今野:
 舞台には言論の自由がありますから。


高橋:
 キワドイ言葉を言えばいいっていうつもりは一切ないんですけど、状況に合った言葉だったりすると、言っとくかみたいな気持ちになりますね。死ねばいいのに、っていうのを、お亡くなりになったとか言うと、むき出しの感じがやっぱりなくなってしまうんで。


 そういう意味では、テレビではできないネタも多いですよね。

今野:
 そうですね。まあ、僕らと心中しようと思うテレビ局もないですから。


高橋:
 それは、まあそうだね。


 前回の単独ライブ『ゴジラvsキングオブコメディ』では、高橋さんがツッコまれる側に回るという、逆の立場のコントもありました。

高橋:
 まあ、単純に……バラエティに富ませるために(笑)。でも、普段、僕がふざけて、こいつがうっとうしがったりすることが多いんですよ。まんま、いつものやり取りから出来たネタでしたね。基本的に、その単独のネタみたいに、僕はおならをして今野に謝れって言われても、謝らない。真剣なテンションで、今野が「なんで謝らないの? え、なんで謝らないの?」ってずっと言ってくるのをシカトしているうちに、このネタが固まってきたんだよね。


今野:
 固まったね。固まるほど謝らなかったね、お前は。


高橋:
 最終的に、僕が面倒くさくなって、「ごめん」って言うと、「あー、気持ちいい、あー、気持ちがいい」ってすぐ許してくれるんですよ。


今野:
 だから、もう、最初から謝ってもらえればいいだけの話なのに、全然謝らないから。


高橋:
 で、その後、またちょっと屁をすると、謝れよってまたそのやり取りが繰り返されるんですけどね。


 やり取りのしつこさがとにかく印象的なネタでした。

今野:
 しつこいですよねえ。あんなに展開しないネタもない。


高橋:
 謝れよっていうだけのネタですからね。


 しかし、普段の二人の関係を反映させたネタだとは思いませんでした。

高橋:
 今野は基本的にいろんな部分でカッチリしてるんですよ。衣裳とかも、畳まないで返すとすごいぐちぐち言うし。昔とかだとお金とかも、自分が食べたものは自分で払うみたいな感じがすごくあって。


今野:
 そりゃそうでしょ。


高橋:
 いや、みんなでちょっとずつつまんで、割り勘とかするじゃないですか。こいつは自分の分は自分だけで食べるっていう。


今野:
 それはほんとひとりっこ特有のものだと思いますよ。


高橋:
 喫茶店で、打ち合わせとかしていて、こいつがカレーを頼んで、僕がグラタンを頼むとするじゃないですか。で、ちょっとカレーも食べてみたいから、ちょっとちょうだいって言っても、断固として嫌がるんですよ。


今野:
 ほんとね、嫌なんですよ。


高橋:
 こっちのグラタンもあげるって言ってるのに、いらないっていうんですよ。


今野:
 自分が嫌なことは人にもしたくないの。僕はとられたくないから、とらない。


高橋:
 本当にちょっとだけ味を見るって、コミュニケーションでもあるじゃないですか。それを拒絶されてね、もう意地になって奪い合いですよ。


今野:
 嫌がってることをやりたがる意味が分からない。人が嫌がったらそこでやめればいいのに、それをあえて貫き通すもんね。


高橋:
 いや、なんとか土足で踏み込んでやろうと思って。いずれは今野も人と食べ物を共有することがどんなに楽しいことか分かってくれるんじゃないかと思って食べ続けてます。


今野:
 ……いや、俺は一生お前にとられるだけだよ。


 あのコントが彷彿とされるやり取りですが(笑)、今野さんのこういうカッチリした所というのは、ネタを作る際にも表れたりするんですか。

今野:
 ネタに関しては逆ですよ。


高橋:
 僕の方が変えないですね。こいつとか、途中でどうでもいいよ、みたいになってることがたまにあるんで。それが、カレーの時でもちょうどいいぐあいに出て、「もういいよ、食べろよ」みたいになってくれればいいんですけどね。


 自分の考えたことを変えたくないという感じなんですか?

高橋:
 変えたくないというか、一回思いついたのを試してみたい、という感じですね。試した後に、すぐに変えたりはするんですけど、一度はどうしても思った通りにしてみたいっていう部分はあります。


 次回では創作のヒントに迫ります。

第4回

 第4回は、笑いを生み出す彼らの活動から創作のヒントを探る。

 さて、現在はお笑いブームと言われていますが……。

高橋:
 先輩たちが毎日のようにテレビに出てますよね。僕が事務所に入った頃なんて、誰も知らなかった人たちがですよ。


今野:
 アンジャッシュの渡部さんなんかジーンズメイトがいいって言ってたのにね。


高橋:
 お前もいいって言ってたじゃん。


今野:
 ……いや、俺は言ってないよ。


高橋:
 最近、オシャレだっていわれるようになったら、そのことを認めないんです。


今野:
 お前は嘘うまいなあ、相変わらず。


高橋:
 話がちょっとそれますけど、コンビ組みたての頃とかほんとに服のセンスがひどかったんですよ。迷彩が好きだった時があって、上のシャツ迷彩、ズボン迷彩、靴迷彩みたいなあり得ない服装で来たことがあって。それが、途中から変わったんですよ。


今野:
 変わらないですよ。ぼくずっと同じセンスですから。人間のセンスって変わるものじゃないでしょう?


高橋:
 変わるよ。その変化を間近で見てきたよ。ほんとに僕が見てもオシャレになったなって時期もあったんです。その頃は、お金がないなりに、奇抜な組み合わせとかが、確かにオシャレだなって感じだったんですけど、最近、丸井とかで全部そろえちゃったりして、成金みたいな格好なんですよ。


今野:
 ……結局ね、どんなにダサイ服を着ていても、ポール・スミスだっていうだけで、周りの見る目が変わるわけですよ。


高橋:
 最悪だよ。


今野:
 だからね、ブランドに弱い日本人にも問題がありますよ。日本が悪い。政治が悪いんです。


高橋:
 まあ、でも、そういう俺もひどかったけどね。中3まで半ズボン履いてたし。


今野:
 それはすごいよ。


高橋:
 いわゆるトランクスみたいな感じの短パンで塾とか行ってたの。


今野:
 周りと自分のファッションが違うなとか思わなかったの?


高橋:
 それはすごく感じてたけど、俺はこっちのほうがいいって思ってた。当時、一番かっこいいと思ってたのはランニングに半ズボンだったの。薄着なら薄着なほどかっこいいと思ってた。


今野:
 薄着の方がかっこいいって小学校低学年の発想だよ。


高橋:
 薄着がかっこいいっていうのは、未だにありますね。あんまり長袖を着たくないっていう。


今野:
 じゃあ、今度、その格好してこいって。


高橋:
 今はやだよ。


 話を戻しまして(笑)、お笑いブームということもあり、活動の場が増えた現在ですが、お二人は、今後、どんな活動をしていきたいですか。

高橋:
 これ一番迷う質問だなあ。最近はラジオがやっぱりやりたいなって思いますね。意味なく脱線してしゃべっていられる場って多分、ラジオだと思うんですよ。客前でトークライブっていったら多分また違う。そういう意味でラジオがいいな、と。まあ、できることならですけどね、まだやったことないんで。


今野:
 だらだらと話すのはいいねえ。


高橋:
 芸人さんがラジオを手放さないのはお笑いに向いてるからなのかなって思うんですよ。プレッシャーとか制約が少なくて成り立つ媒体というか。


 今野さんはどうですか。

今野:
 まあ、クレープ屋をやりたいっていうのはあるんですけど。


高橋:
 なに、ビジネス的な展開を考えてるの?


今野:
 そう、お金が入ったら、とりあえず、大宮にクレープ屋を出したいんですよ。僕、よく大宮で遊ぶんですけど、ふと気づいたらクレープ屋がない。


高橋:
 こんな理由ですよ。


今野:
 絶対、需要があると思うんですよ。2号店は巣鴨に出します。


 クレープ屋以前の、芸人としての展開についてもう少し聞きたいんですが(笑)。

今野:
 ああ、そこを聞きたいの。そこはノープランです。


高橋:
 えー、そこが聞きたいとこでしょ。


今野:
 じゃあ、コント番組とか出たいですよ。


高橋:
 じゃあ、って感じ悪いよ。


今野:
 でも、それは本当にやりたい。だって、もともとテレビのコントを見て、これがお笑いだと思って、この業界に入ったわけですから、そこは経験しておきたいです。今が意味分からない状態ですから。今、テレビでコントやるにしても、コンビだとなんかちょっと違うし、って思うんですよね。


高橋:
 ふたりってなんだよって(笑)。やっぱり、みんなでコントを作るというのは、憧れますね。


 最後に、答えづらいとは思いますが、芸人であり続け、コンビであり続ける理由を教えてください。

高橋:
 なんですかね、たまにちゃんとお客さんがすごく笑ってくれて、最低額のお金をもらっているから、かな。でも、最低額ももらってないときからやってるからな……。


今野:
 JCAの授業の時に、マギー司郎さんが「とりあえず辞めないことだ」って言ってたんですよ。僕はそれをずっと信じてるだけなんですけどね。


高橋:
 ああ、そうなんだ。


今野:
 だから、マギー一門なんじゃないかなって。


高橋:
 違うよ。まあ、でも確かに結局この世界で大事なのは辞めないこと、なんですよね。


今野:
 でもね、僕はいつ辞めてもいいやとも思っているんですよ。だから、逆に続いているんだと思いますね。頑張ってる方が、何かマイナスあった時に辞めちゃうんじゃないかな、と。


高橋:
 ああ、現代っ子ね。


今野:
 僕はもういつでも辞められるから。


高橋:
 僕は真逆ですね。辞めたくないという気持ちが強い。辞めてもいいという開き直りがもう少しあってもいいのかな、と思うんですけどね。


 でも、コンビがふたりとも明日辞めてもいいやと思っていたら、成り立たないような(笑)。

今野:
 明日辞めてますよね。


高橋:
 まあ、そうかもしれない(笑)。確か、以前にたけしさんが言ってたんですけど、本当はこれをやりたかったんだけど、家の都合とか理由があって、しょうがなく諦めたっていう人がいるけど、そういう人はほんとはやりたくなかったはずだって。もちろん、やりたくても、やれないっていう人は絶対いると思うんですけど、それでもやってる人はやってるんですよね。まったくウケなかろうが、まったくお金が入ってこなかろうが、それでも続ける選択肢はある。それを思うと続けられるのかな、と思います。

●キングオブコメディ●
●高橋健一(たかはし・けんいち)1971年3月30日生まれ、東京都出身。
●今野浩喜(こんの・ひろき)1978年12月12日生まれ、埼玉県出身。

 スクール6期生の二人が卒業後コンビを結成。第3回お笑いホープ大賞優勝し、さらなる注目を集めるコンビ。「エンタの神様」(NTV)「日曜日の秘密基地」(TBSラジオ)などに出演中。10月より毎週日曜日22:54からの『ライヴバン!』(TX)に出演。
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