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あれから何回となく、吉ちゃんや大ちゃんからゴルフの誘いがあった。その度に断ってきた。もう一ヶ月ゴルフクラブさえ握っていない。吉ちゃんには、「俺、ゴルフのセンスがないから、もうゴルフは辞める」と明言していた。たかが遊びなのに苦痛を感じながらゴルフをする必要もない・・そんな冷めた気分でいる時、ゆかりさんから電話がかかってきた。ゆかりさんとは九州アマ予選の日以来、話をするのも一ヶ月ぶりだ。何回か電話をしようという衝動に駆られたが、その都度躊躇した。風の噂によると、ゆかりさんも今年は二次予選を通過する事が出来なかったみたいだ。その時も電話で励まそうと思ったが、俺みたいなゴルフの下手な人間が電話をしても励ましにもならないと思い電話しなかった。
ゆかりさんの声は元気そうだった。内容はゴルフの誘いだった。今週の木曜日、どうしてもゴルフに付き合ってほしいと言う。もう一ヶ月、ゴルフをしていないからと言って、一旦は断ったが、半ば強引な誘いに断れ切れなくなった。それから集合時間も早かった。朝六時に四州カントリークラブで待ち合わす事となった。
当日、ゴルフ場に着くとゆかりさんが万遍の笑顔で俺を出迎えてくれた。ゆかりさんは何時会っても俺に優しく接してくれる。塞ぎこんだ気持ちが幾分晴れたような気がした。朝早いせいか、吹いてくる風も心地よかった。鳥のさえずる声も近くで聞こえる。
「加納さん、おはようございます。今日はゆかりに付き合っていただいて嬉しいですわ」
「おはようございます。ゆかりさんに久しぶりに会えて俺も嬉しいです」
俺も何となく清々しい気分になっていた。ゆかりさんには人を癒してくれる不思議な雰囲気がある。
「二階のレストランに今日一緒に回ってくださる田代夫妻が来てらっしゃるので、ご紹介しますわ。それでは二階に行ってみましょうか」
俺はゆかりさんに誘導され、二階のレストランに向った。田代夫妻は椅子に腰掛け、お茶を飲んでらっしゃった。見た目、高齢の方に見える。ゆかりさんに紹介してもらうと、二人とも人懐こい笑顔で頷いてくださった。
「加納さん、田代さんたちはいつもご夫婦でこの時間帯からゴルフされてらっしゃるのよ」
「ゆかりちゃん、老人になると目が覚めるのが早いんじゃよ。ばーさんも朝早くからゴルフ行こう、ゴルフ行こう、言うてな」
何となく話を聞いているだけで、ほのぼのとした気分になる。
「加納さん、それと田代さんはエイジシュートを五回もやってらっしゃるのよ」
「ごめんなさい。エイジシュートってなんですか?」
今まで聞いた事のない言葉だった。
「エイジシュートって、自分の年齢以下のスコアーでコースを回って来る事ですわ」
「ほーっ、失礼ですが今お年はお幾つですか?」
俺は田代老人に聞いてみた。
「わしが八十三歳で、ばーさんが七十七歳じゃ。しかし未だ元気にしとるからのう・・」
言われたとおり、見た目にもとてもそんなに高齢には見えない。それに年取ってからも夫婦でゴルフを楽しめる事自体、素晴らしい事だ。若い俺が逆に老人からパワーをいただいたような気がした。
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