Creator’s World WEB連載
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第1回 第2回 第3回 第4回
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アマゴルファー 加納 竜也は 今日も行く 第121回

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 ショートホールの次のロングホールは六百五十ヤードあった。幾らロングホールと言えどもこの距離は今まで経験した事がなかった。ティーショットをドライバーで打ち、二打目をスプーンで打ったが、それでもピンまで二百ヤード残した。三打目はクリークで打った。しかしグリーンに乗らなかった。それからサンドウエッジでグリーンには乗せたが、そこからスリーパットしてしまい、再びダブルボギーだった。社長と音山さんはさすがに飛ばす。特にスプーンの飛距離と精度が俺と極端に違った。二打目を打った時点でピンまで残り百三十ヤードしか距離を残さなかった。遠くへ飛ばすクラブをもっと練習しなくては勝負にならないなと痛感させられた。
 その後もいろいろと攻め方を教えてもらい、十八ホール上がってみると、メモ帳にはぎっしりと各ホールの注意事項が並んだ。今日は帰ってから整理することにしよう。
 ゆかりさんも、「楽しく回りましょうね」と俺に言った割には、一ホール、一ホールメモを取りながら回っていて、ラウンド中、余り話さなかった。ティーショットの場所も二打目を打つ地点も違うのだから、当然といえば当然だが・・ゆかりさんは本戦への出場を目指しているのだからと思い、俺も敢えて邪魔しないように心がけて回った。
 自宅に帰り着くと俺は早速メモ帳の整理をした。コースの攻め方は大体判ったが、今日のラウンドでもドライバーショットが余りよくなかった。距離のないコースならさほど気にも留めないのだろうが、このコースはドライバーで飛距離が出ないとパーを取るのが難しかった。パーを取るにはドライバーが飛ぶか、寄せが完璧にピンに近づけられるかのどちらかしか方法がない。調子の良い時なら両方上手い具合にかみ合うのだろうが、今の俺にはその可能性は非常に薄いように感じられた・・どうもこの頃、マイナス志向で困る。悪いイメージだけが膨らんでいく中、大会が段々に近づいていった。



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アマゴルファー 加納 竜也は 今日も行く 第122回

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 大会当日は、晴天に恵まれたが非常に浜風の強い日だった。時々突風が吹き荒れる。俺は練習グリーンでパターの練習をしながら、緊張の為、手が震えていた。アウト一番のティーグランドにはテントが張ってあり、その中で大会役員の方々が重々しい雰囲気でティーショットを打つ選手たちを見守っていた。各ゴルフクラブからも支配人やその関係者の人たちが多く詰め掛けている。見守る人たちだけでも五十人ほどいた。
 俺たちの前の組がスタートしていき、俺たちの組がティーグランドに呼ばれた。大会役員の前で簡単なルール説明とボールの確認を行なった。四人の中で俺が一番最後にティーショットを打つ。ローハンディー順にティーショットをしていくらしい。俺のマーカーは四人の中で一番ローハンディーの人がする事になっている。前の組が二打目を打ち終わり、いよいよ俺たちの組の一番目の人がドライバーショットを打つ事になった。より一層緊張感が高まった。ドックンドックン、心臓の音が聞こえる・・動悸が止まらない。三番目の人が打ち終わり、俺の番が回ってきた。ティーアップに入った時にその緊張感が最高潮に達した。ボールにドライバーをセットしても両足が宙に浮いていて、腰が定まらない。心臓は口から飛び出そうだった。顔は引きつり、頭の中は真っ白だった。そんな状態でドライバーを振り下ろした。ボールはドチーピンがかかり、ティーグランドから目と鼻の先にある左側の小高い丘の土手に突き刺さった。初めはどこにボールが飛んでいったのかさえ判らなかった。俺のマーカーの人が指を指して教えてくれた。顔から火が吹き出そうだった。俺は小走りにその丘に向かって急いだ。ボールはすっぽりとラフの中に埋もれていた。これだけラフが深いと打つクラブがない。迷ったあげくサンドウエッジを手に持った。力いっぱい鋭角にラフの中へ振り下ろした。何とかフェアーウエイまでボールを戻すことが出来た。しかしまたもや持つクラブを迷った。未だグリーンまで三百ヤードぐらいある・・スプーンを手に持った。それが間違いだった。ボールに鋭いフックがかかり、左へオービーを打ってしまった。ティーグランドのテントの中では大会役員の方々が身を乗り出して俺の方を見つめていた。早くその人たちから見えない所まで先へ行きたかった。次のショットでは五番アイアンを手に持った。アイアンのショットもおかしくなっていた。オービーにはならなかったものの、スライスして林の中へ飛んでいった。六打目は再びフェアーウエイに出すだけだった。七打目はようやくグリーンに乗せる事が出来たが、グリーン上で待っている三人の事を考えると、どうやってパットを沈めようかと言う事よりも早くホールアウトをしなければならないと言う気持ちの方が先にたった。前の組から一ホール開けるとこの組全員がペナルティーを受ける。それだけは避けなければならない。必然的にパットに集中出来る筈もなかった。このホール、スリーパットしてしまい、十叩いてしまった。たった一ホール回っただけで、六オーバーである。気持ちが萎えた。それと同時に他のメンバーに悪いという気持ちが沸いて出た。



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アマゴルファー 加納 竜也は 今日も行く 第123回

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 次のショートホール、練習ラウンド同様、俺はバフィーを手に持った。気を取り直して振りぬいたつもりでいたが、風の計算もなにも頭の中になかった。完全に冷静さを失っている。ボールは強い風に押し戻され空高く舞い上がって前に飛んでいかなかった。グリーンよりかなり手前の崖を越すことさえ出来ずに再びオービーを打ってしまった。俺は深呼吸をすると、今度はスプーンで打った。ボールはグリーン奥のバンカーへ入った。もう自分で何をやっているのか判らなくなった。ゴルフにならない。バンカーからのショットもグリーン下りは速いという事だけが頭の中にあって、一回目のショットでバンカーから抜け出す事が出来なかった。二回目はバンカーから脱出できたが、グリーンの下までボールが転がりグリーンをこぼれる。そこからスリーパットして、このホールも八叩いた。
 一度崩れたリズムは緊張が段々ほぐれて来たからと言って、簡単にいいリズムに変わるものではなかった。ドライバーも、アイアンもパターもちょっとずつ狂っていた。全てが思うようにかみ合わない。こんな調子でパーなど取れるものではなかった。次第に今、コースを回っていること自体、苦痛になってきた。ゴルフを始めて以来、初めて途中で帰りたい心境になった。アウトコースからインコースに入って来ると、よりいっそう足取りが重くなった。歩くのが辛い。自分のスコアーをつけるだけで精一杯なのに他の人のスコアーをつけなければならない事が面倒だった。練習ラウンドでメモった手帳など一回も見ていない。ただひたすら早くコースアウトしたかった。残りのホールを消化しながら、「何の為に九州アマ予選に挑戦したんだろう」と思った。大ちゃんが言ったように無謀だった。俺は気だるさの中で出場した事を後悔していた。
 十八ホール終了し、テントの中でスコアーカードを書き写した。マーカーから俺のスコアーカードを貰った。アウト五十二、イン四十八のトータル百。とてもこの予選に参加する資格のないスコアーだった。俺はそのカードにサインをして提出すると誰にも会わないように逃げるようにして自宅へ急いだ。



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アマゴルファー 加納 竜也は 今日も行く 第124回

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 自宅に着くと、ほっとすると同時にどっと疲れが出た。ゴルフウエアーのままベッドの上に倒れこんだ。身動き一つせず目を閉じる。悔しさが込み上げてきた・・もうゴルフなんてするものか!無気力感が漂う中、携帯電話のベルが鳴った。久山大輔と表示されている。俺は電話に出なかった。七回ぐらいコールした後、電話は切れた。それからしばらくして又電話のベルが鳴った。今度は吉川純一と表示された。その後も亀田さんや内山さんから電話があった。全ての電話を拒否した。電話の内容は大体想像がついた。もうすでに全ての結果は貼り出されている筈だ。明日になれば俺が教える必要もなく、皆に知れ渡る。
 俺は風呂に入ると、缶ビールを立て続けに二本飲んだ。でも全然酔いが回ってこない。焼酎をロックで飲むことにした。テレビを点け、ベッドに寝転がりながら飲んだ。テレビの内容など全く頭の中に残らない。ただ惨めな気持ちだけがどんどん増幅していった。
 ぼーっとしてテレビを見ていると又携帯電話のベルが鳴った。ベルの音を聞きながら、携帯電話を取ろうともしなかった。どうせ又野次馬が電話をして来たのだろう・・電話が切れて初めて携帯電話を取り上げた・・ゆかりさんからの電話だった。俺は慌てて留守電を聞いてみた。四件、録音されていた。余計な録音を飛ばして、ゆかりさんの留守電だけを聞いた。
「加納さん、ゆかりです。今日は相当、調子が悪かったみたいですね・・でもゆかりだって調子が悪い事もありますし・・元気出してくださいね。加納さんの元気な声を聞かせていただければ嬉しく思います」
録音が切れた。今の俺にはゆかりさんに電話をする元気さえなかった。迷ったあげく電話するのを止めた。ゆかりさんには惨めな声を聞かせたくない・・俺は焼酎ロックを飲みながら酔い潰れるのを待った。