Creator’s World WEB連載
Creator’s World WEB連載 Creator’s World WEB連載
書籍画像
→作者のページへ
→書籍を購入する
Creator’s World WEB連載
第1回 第2回 第3回 第4回
LINE

アマゴルファー 加納 竜也は 今日も行く 第109回

LINE

 俺たちはラウンド中、亀田さんの話題に花が咲いた。大ちゃんは亀田さんの事をピヨンピヨンおじさんと呼んでいた。
「亀田さんは自分の調子が良くなるとピヨンピヨン言い出すんですよ。ピヨンが出だすと要注意ですよね」
「そうか、どおりでこの前はピヨンピヨン連発して言ってたわ。それじゃ調子が悪い時はどうなるの?」
「余り調子が悪い時を知らないけど、でもその時は耳たぶが真っ赤になって何にも話さないそうですよ」
亀田さんの知らない部分を大ちゃんから聞いて、何となく可笑しかった。耳たぶの色が調子のバロメーターか・・今度内山さんに聞いてみよう。
 何のプレッシャーもなく、気の合った友達と回るゴルフは楽しかった。この頃大ちゃんとはハンディーどおりの握りになった。ハーフで二つ貰っているが、勝ったり負けたりしている。握りも小さいので、勝った方が終わった後のサウナ代と牛乳を一本ご馳走するようにしている。どうも今日は大ちゃんの奢りになりそうだ。この頃、どうもパターの調子が今一つだった・・
 十一月三日の吉ちゃん所のオープンの日、午後一時の新装開店にも関わらず午前十一時ぐらいから入り口前に人々の行列ができた。今日は文化の日で仕事も休みと言う事もあってか幅広い年代層のお客さんが並んでいる。店の前と駐車場のフェンスには並べきれないほどの花輪が立ち並んでいた。一番目立つ所に加納設計事務所の花輪があった。今日はうちの事務所としてもいい宣伝になる。吉川社長も嬉しそうだった。
「加納さん、今日は出血大サービスだから楽しんで帰ってくださいよ」
「えー、パチンコ台に空きがあったら打たせていただきます」
このお客さんたちの行列からしてパチンコ台に空きが出そうも無いことは容易に想像できたが、たまにはパチンコを楽しむのもいいかもしれない。



第1回 第2回 第3回 第4回
LINE

アマゴルファー 加納 竜也は 今日も行く 第110回

LINE

 開店五分前になると、チャゲ&飛鳥の「YAYAYA」の曲が一斉に鳴り出した。この曲は俺が社長に提案した曲だ。パチンコ屋の音楽といえば軍艦マーチが定番だが、この建物のコンセプトからしてオープンの日ぐらいは軍艦マーチを流してほしくなかった。社長も俺の提案を受け入れてくれたわけだ。でもこの曲も意外と店の雰囲気にマッチしていた。お客さんたちも扉が開くのを今か今かと待ち侘びている様子が見て取れた。それからしばらくして店員さんが扉の鍵を開けた。そして入り口の扉を全開にすると、お客さんたちがなだれ込むようにして店内に入っていった。デパートのバーゲンセールでおばちゃんたちが目当ての商品に向かって走っていく姿とよく似ていた。お客さんたちが全員店内に入ると俺も店内に入った。パチンコ台にありつけず、立っているお客さんもいる。折角並んだのに不運なお客さんもいるものだ。
 店がオープンして間もなくすると大当たりのパチンコ台が続出しだした。さすがに今日は出血大サービスだ。一時間もするとパチンコ箱が次々と積み重ねられていく。俺は電気系統に不備がない事を確認すると社長に挨拶を済ませ店を出た。幾ら待ってもパチンコ台が空きそうもない・・でもオープンの日が晴天の日でよかった。これだけ盛況だと俺も嬉しい。俺はその足でヤードストーンに向かった。一つの仕事を成し遂げた後のコーヒーは格別美味しい事だろう。
 大王店の新装開店ゴルフコンペは十二月五日で決まった。新装オープンから一ヶ月間は吉川社長もいろいろ忙しくて日時の調整が出来ないみたいだ。業者関係の出欠は俺が取りまとめ、業者関係から二十九人の参加者があった。毎年行っているらしい忘年会ゴルフコンペの人数と合わせると八十人ぐらいのコンペになるらしい。俺は吉川社長から出欠名簿を貰い、組み合わせ表を作ることになった。申し込み用紙に目を通すと、俺が今までに一緒にラウンドしたことがある人たちも数多くいた。シングルの人たちも二十人ぐらいいる。レベルの高いゴルフコンペになりそうだ。その中に池田ゆかりさんの名前もあった。「なーんだ、ゆかりさんが参加するんだったら、一緒に回りたかったな」と思ったが、俺たちの組はもうすでに決定していたので今からどうすることも出来なかった。中には一緒に回りたい人を指定してある申込用紙もあった。シングルの人たちは、ほとんど池田ゆかりの名前を書いていた。さすがにアマチュアゴルフ界のアイドルだけの事はある。俺はゆかりさんを音山さんの組にいれた。それとまゆみさんもその組にいれた。彼女もいいゴルフの勉強になるに違いない。



第1回 第2回 第3回 第4回
LINE

アマゴルファー 加納 竜也は 今日も行く 第111回

LINE

全ての組み合わせ表を作り終えると、一度吉川社長に目を通してもらった。進行が遅れないよう下手な人たちだけの組をなくしたりして若干の変更はあったが、別段他に支障はなさそうだった。俺は事務所に戻りそれを変更しなおすと郵送した。十二月五日が楽しみだ。
 ゴルフコンペ当日、雲ひとつ無い晴天に恵まれた。俺がゴルフ場に顔をだすと、いろんな人たちが声をかけてくれた。ここ一年間で大分知り合いが増えた。俺はゆかりさんの姿を探した。ゆかりさんは今日一緒に回る音山さんと話をしていた。まず初めに俺の顔を見た音山さんから話しかけてくださった。
「加納君、久しぶりだね。中山プロの壮行会以来だね」
「そうですね。あの時はいろいろゴルフ教えてくださって有り難うございました・・ゆかりさんも久しぶりです」
「本当に久しぶりですわね・・だってあれから加納さん、一回もゴルフ誘ってくださらないんですもの」
「まだまだ俺なんか下手くそでゆかりさんに迷惑かけるし・・それに考えてみたら未だ電話番号を聞いていなかったし・・」
「おいおい加納君、俺も未だゆかりちゃんの携帯電話の番号聞き出せないんでいるんだぜ」
音山さんがそう言った。ゆかりさんは、ただ色っぽい目で黙って微笑んでいた。俺より年下だが、俺より落ち着いている。その内、まゆみさんも現れた。彼女は俺の顔を見るなり、
「加納さん、私、今日一緒に回る人たち、皆シングルの人たちなの。知らない人ばっかりだし、どうしょう」
と話しかけてきた。
「あの組み合わせ表、俺が作ったんだけど、こちらにいらっしゃる方たちがまゆみさんと今日ラウンドされる、音山さんと池田さんだよ」
俺が二人を紹介してやった。彼女は慌てて二人の方を振り向き挨拶をした。
「久保田まゆみです。今日は足を引っ張らないように頑張りますので宜しくお願いします」
「音山です。今日は楽しく回りましょうね」
音山さんは美女二人に囲まれて本当に嬉しそうだ。続いてゆかりさんが挨拶した。
「池田です。今日はよろしくお願いします・・でも私、父からまゆみさんの事、聞いた事ありますわ。若いのに女性社長として頑張ってらっしゃるって」
「えーっ、お父さんから?」
「はい、私の父の会社は池田設計事務所って会社です」
「あーそーう、池田さんの娘さんか。なーんだ、今日はよろしくね。お父さんには本当に親しくさせてもらっているから・・今、仕事が暇なんで宜しくお願いしますって言っといてね」
急に慣れなれしく話し出した。でもゆかりさんの事も満更知らない訳でもなく良かった。まゆみさんも安心した様子だった。それから女性同士の会話が始まった。



第1回 第2回 第3回 第4回
LINE

アマゴルファー 加納 竜也は 今日も行く 第112回

LINE

俺は三人に、
「それでは、又後で懇親会場でお会いしましょう」
と言うと吉川社長の所へ向かった。社長は亀田さんと内山さんの三人で話し込んでいた。俺がその会話に交わると社長から、
「加納さん、今日のルール決めたから」
と言われた。俺と吉川社長と組んで、トータルスコアーでチーム選をするらしい。俺たちのチームは俺のハンディー分、トータルで六貰っているらしい。その代わり一打二千円で、バーディーが三千円、イーグルが五千円と今までよりもレートが倍に跳ね上がっていた。俺は多少心配になり、
「社長、大丈夫ですか?大分レートが高いみたいですけど」
と吉川社長に言った。でも吉川社長は自信に満ち溢れていた。そんな頼りになる表情を見て俺も大船に乗った気分で楽しもうと、腹をくくった。
 開会式は簡単なものだった。吉川社長の開会の挨拶があり、吉ちゃんが競技ルールと懇親会の場所と開宴時間を説明した。懇親会の場所は小太鼓と言う割烹料理屋で時間は午後七時からだった。懇親会に参加しない人には今日の景品が渡らないという。
 開会式の最後に始球式があった。スモークボールを吉川社長が打つ。参加者全員が見守る中、社長は力強く振りぬき、空振りして見せた。音山さんが、
「社長も相当ゴルフが下手になったな」
と大きな声で言った。参加者全員が爆笑した。歓声が収まると再び打つ体勢にはいった。静寂の中、再び音山さんが言った。
「今度は空振りするなよ」
また笑い声が起きた。社長はその笑い声を心地よく感じるかのようにそのまま振りぬいた。ボールは青い線を引いて真っ直ぐに飛んでいった。参加者全員から一斉に拍手が起こった。