Creator’s World WEB連載
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第1回 第2回 第3回 第4回
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アマゴルファー 加納 竜也は 今日も行く 第101回

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 日曜日の朝、俺の車で吉ちゃんと二人、ゴルフ場に到着すると、亀田社長が俺たちを待ち構えていた。練習グリーン上でいきなり、
「純一君と加納君は八十五前後でラウンドするそうじゃないか。俺と内ちゃんのオフィシャルハンディーが六だから、割のいいところ、今日はラウンド六点二人にやろうかね」
と話しかけてきた。亀田社長も内山社長も長年競技ゴルフに参加していて相当ゴルフが上手いらしい。ハンディー六と言うが、勝負事になると負けた事がないと大ちゃんから聞いていた。吉ちゃんが言った。
「亀田さん、ラウンド八点くださいよ」
「純一君、君の為を思って言っとくけど、自分の勝てそうなハンディーで握ってもゴルフは上達しないよ。自分の実力を伸ばそうと思うんだったら、授業料を払う気持ちでやらないとね」
何となく理屈が通っていそうな、いないような話だった。続いて俺が聞いた。
「それでどんなルールでやるんですか?」
「点数は一打千円で、バーディー賞が二千円、イーグル賞が三千円。まあー君たちが実力を出せば二、三千円の負けで済むから」
初めから自分が勝つと言っている。俺の闘争本能にも火がついた。
「判りました。そのルールでやりましょう」
「竜ちゃん、言っとくけど、亀田さんも内山さんも相当強いからね!」
吉ちゃんは心配してそう言った。俺は「負けても一万円ぐらいだから」と腹をくくり、ハンディーもラウンド六だけで了承した。しばらくして内山さんも現れた。
「内ちゃん、ラウンドで六点やる事にしたから」
亀田さんが内山さんにそう言った。
「それでレートは?」
「いつもどおり」
「それは負けた時にちょっと可愛そうだから、半分ぐらいのレートにしてやったら?」
「だめだめ、甘やかすとゴルフは上達しないし、競技ゴルフを目指すんだったら俺たちに挑戦してこなくっちゃ」
誰も競技ゴルフを目指すとも言ってないし、挑戦するも何も今日のゴルフだって無理やり約束をさせられたんじゃないかと思ったが、トータリークラブの先輩だし俺は不満を口に出さなかった。吉ちゃんは、「そうですよね。レートを半分にしましょうよ」と言ったが、亀田さんは妥協しなかった。内山さんは黙って聞いていた。この人は余計な事も喋らないし、俺たちに対して何となく思いやりがあるように感じられた。しかし結局は初めのレートでやる事で決まった。



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アマゴルファー 加納 竜也は 今日も行く 第102回

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 アウトの一番、俺のドライバーショットはいきなりラフの中へ入ってしまった。この前回った時よりもラフが一段と深くなっている。二打目をショートアイアンで打ったが、ラフを抜け出すだけで五十ヤードぐらいしか飛ばなかった。三打目がやっとグリーンエッジまで届いて何とかボギーであがる事ができたが、亀田さんも内山さんもパーだった。
 アウトの二番はショートホールで、亀田さん以外は皆ワンオンした。このホールは点差が離されることはないなと思ったが、グリーンエッジから打った亀田さんのボールはカップにチップインした。
「入っちゃったピヨン」
変なおじさんだ。言葉の末尾にかえるみたいにピヨンとつける。皆の笑いを誘った。続いて内山さんも三メートルのバーディーパットを沈めた。俺と吉ちゃんはバーディーパットが入らずパーだった。このホールは点差が離れないと思っていたのに、またもや一点差が付いてしまった。
 アウトの三番ミドルホールは亀田さんも内山さんもナイスショットだった。二人とも会心のショットだと俺のドライバーショットより少なくとも十ヤードは前へ飛ぶ。俺はまたもやラフに入ってしまった。どうも今日はドライバーショットがぶれている。吉ちゃんのショットもぶれてラフに捕まった。吉ちゃんが打った後に、
「段々と、ボディーブローが効いてきたかなピヨン?」
と亀田さんが俺たちに言った。俺はなるべく雑音を耳に入れないように心がけた。このホールはグリーン手前に池があって、グリーンまでは百七十ヤードぐらいしかないが、池を越えるのにダイレクトで百四十ヤードは飛距離が必要である。俺は迷った。通常なら迷わず六番アイアンを持って打つところだが、ボールがラフの中にずっぽりと沈んでいる。少しでもラフに食われると池に入る可能性があった。俺はショートアイアンで池の手前に刻む方を選択した。亀田さんが言った。
「攻めていかないと俺たちには勝てないピヨン」
吉ちゃんはその言葉で六番アイアンでラフからピンを狙っていった。やはりラフに食われて池に入ってしまった。再び亀田さんが言った。
「残念だったピヨン」



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アマゴルファー 加納 竜也は 今日も行く 第103回

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  雑音を耳に入れないように心がけていたつもりだったが、どうもピヨンと言う言葉が気になりだした。松村さんも口煩い人だが、亀田さんはタイプが違う。松村さんが誉め殺しをするタイプなら亀田さんは人の心境を上手くついて陽動作戦に出るタイプだ。亀田さんも内山さんも二打目をピン側につけた。そのショットを見ただけでボディーブローが効いてきた気がした。俺の三打目は亀田さんのボールの後ろに落ちた。四打目のパーパットは思ったよりもフックしてカップに入らずボギーだった。亀田さんは俺がラインを丁寧に教えてあげたおかげでまたもやバーディーパットを沈めた。
「加納君がラインを教えてくれたおかげで、またまたバーディーだったピヨン」
顔には出さなかったがムカついた。段々と亀田さんのペースに飲み込まれていく自分が判った。結局このホール、俺がボギー、吉ちゃんがダブルボギー、内山さんがパー、そして亀田さんは前ホールに続いてバーディーだった。
 その後も点差を詰められるホールがなく確実に一点ずつ点差がひらいていった。アウトホールの前半が終わった時点で、亀田さんが三十五のバーディー二つ、内山さんが三十八でバーディー一つ、吉ちゃんと俺が四十二でバーディー無しだった。前半だけで亀田さんに対してハンディーを使い果たしてしまった。おまけに俺たちにはバーディーが一個もない。俺たちも決して悪いスコアーではないが、相手が強すぎる。後半はどんな事があっても喰らいついていかなければならない。



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アマゴルファー 加納 竜也は 今日も行く 第104回

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 インコースの出だしは調子が良かった。初めの二ホール続けてパーがきた。亀田さんの「やれば出来るじゃないかピヨン」の言葉にも迷わされなかった。インの十二番ショートホール、俺のショットはピン側一メートルぐらいの所に落ちた。あとの三人はグリーンに乗ってはいるものの、大分距離を残している。このホールのグリーンはかなり傾斜がついているので、スリーパットも十分にあり得る。しかしさすがに亀田さんと内山さんはツーパットでカップに沈めてきた。俺は上りの一番いいラインからバーディーパットを沈めた。このホールで初めて点差を一つ詰める事ができた。俺は次のインの十三番ミドルホールも勝負に出た。このホールはグリーンまで距離がないため、ドライバーで会心のショットがでれば、残り百ヤードしかない。でもフェアウエイは非常に狭く両サイドがオービーである。いつもはバフィーで刻んでいるにも関わらず、欲張ってドライバーを手にしてしまった。いつもやっていない事を強い人たちを相手にしている時にやるべきではなかった。右にスライスしてオービーを打ってしまった。
「残念だったね。やっぱりこのホールは刻むべきだピヨン」
俺はその亀田さんの言葉にムカッと来て、その忠告に反発した。再びドライバーを握った。冷静さを失っていた。今度は左に引っ掛けてオービーを打った。
「だから言ったのにピヨン」
頭の中が真っ白になっていた。三度、ドライバーを手にした。またもやオービーを打った。さすがに亀田さんも黙っていた。内山さんが、
「亀ちゃん、加納君が冷静さを失っているところに、あんたも煩すぎるよ。加納君、自分の得意なクラブを持って」
と言ってくれた。俺もふと我に返った。俺は五番アイアンで打ち直した。ボールはやっとフェアーウエイ真ん中に飛んでいった。次のフェアーウエイのボールはグリーンを捉えた。ツーパットでカップに沈め、本来ならパーだった。でも実情は三つのオービーを足して十になってしまった。自分自身で自滅してしまった。ゴルフは一旦リズムが狂いだすと歯止めが利かなくなる。