一組目が出て行くと、松村さんが俺たち三人に話しかけた。
「ただ単に回っても面白くないから、一打、二百円でラスベガスでもしようか?」
後の二人はいつもしているらしくルールを理解していたが、俺はどんなゲームか知らなかったので聞いて見た。
「松村さん、俺、ラスベガスって知らないんですけど、どんなルールでするんですか?」
「ティーショットを打つ順番で、一番目と四番目の人たちと、二番目と三番目の人たちがチームになって戦うゲームだよ。二人の内良いほうのスコアーで戦うんだけど、バーディーだとひっくり返るわけね」
今一つルールが判らなかった。でもラウンドしているうちに判ってくるだろうと思って、了解した。それから打つ順番を決めるため、四人でじゃんけんした。松村さんが一番で、二番目が俺、三番目が二村さんで、最後がまゆみさんだった。二村さんが俺に言った。
「俺たち、このホールはチームだから頑張ろうね」
なんだか面白くなりそうだ。
二組目が二打目を打ち終わると、松村さんがティーショットを打った。ナイスショットだった。俺たちみたいにボールは飛ばないが、フェアーウエイのど真ん中に飛んでいった。皆で「ナイスショット」と声をかけた。
次は俺の番だった。素振りをしていると、それを見ながら松村さんが話しかけてきた。
「ほー、いいスイングだね。こりゃ飛ばしやさんだね」
打つ前から煩い。二村さんが、
「松村さんはいつも煩いから、気にしないで打って!」
と声を掛けてくれた。俺は苦笑いしながらティーショットを打った。まずまずの飛びだったが、「ほー、こりゃ凄いわ。飛ぶーっ」と再び言ってきた。まるで誉めごろしだ。俺の次に打った二村さんはその雑音に慣れてるらしく、気にする事なく打った。これもナイスショットだった。打った後に振り向き、
「顎には負けないよ」
と言った。最後にまゆみさんが白マークから打った。ちょっとフック気味に飛んでいったが、ラフでかろうじて止まった。でもここは右ドッグになっているから、あの位置なら逆に二打目が打ちやすいかもしれない。
俺は三打目をフェアーウエイ中央から打ちたかったので、二打目を打つ時、飛距離が稼げて割と安定している五番アイアンで打った。この辺は今までの教訓が生きている。後の三人は二打目をスプーンで打った。まゆみさんは少々ダフリ気味で、残り百八十ヤードほど残したが、後の二人はグリーン近くまでボールを運んでいっている。さすがにシングルになると長いクラブが安定している。三打目は先にまゆみさんが打った。ボールはグリーン手前のバンカーに捕まった。俺は残り百六十ヤードを七番アイアンで打った。ピン手前、二メートルで止まった。イメージどおりだ。
「ほー、ナイスショット。さーすが」
又、松村さんが言った。彼は俺のボールを確認するとすぐに三打目を打ったが、俺のボールよりピン内につけた。最後に二村さんが打った。彼のボールはぽっかりと抉られたディポットに入っていた。ディポットの中でも、抉られた手前縁の所にあった。一番難しいショットである。ショートアイアンで上から打ち込んだ。上手く打ったが距離が足らず、これもまたグリーン手前のバンカーに入った。俺と松村さんがバーディーチャンス、二村さんとまゆみさんが同じバンカーに入っている。バンカーショットは二人ともピンに寄せきれず、ボギーを叩いた。俺は惜しくもカップに入らず、パーであがった。松村さんはナイスバーディーだった。松村さんはバーディーショットを沈めるとまゆみさんに向かって、
「このホール、二点ゲット!」
と言った。彼がバーディーだった為ひっくり返り、俺とは比較せずに二村さんのスコアーと比較するらしい。バーディーとボギーで二点差がついた。
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