俺はその出来上がったばかりの名刺を持って、早速、山城病院に出向いて行く事にした。山城病院について玄関口から中へ入ると、病院の中は今インフルエンザが流行っているせいか、患者さんで込合っていた。俺は受付カウンターへ真っ直ぐに進み、受付カウンターに置いてある用紙に自分の名前を記載し、診療という欄に丸印をつけた。用紙への記載が終わると待合ロビーのソファーに腰掛け、池田ゆかりが何処かに居ないか、辺りを何気なく見回した。診察を受ける患者さんが多いせいか、看護婦さんたちも忙しそうに動き回っていたが、池田ゆかりの姿は見かけることが出来なかった。俺はこんなにも患者さんが多ければ、自分が診療を受けるまでには相当、時間がかかるだろうなと思いながら、待合ロビーに設置してあるテレビに目をやった。点けっぱなしになっているテレビではお昼のワイドショー番組をやっている。俺はしばらくの間、そのワイドショー番組を見ていたが、芸能界の事については疎いせいか、すぐに飽きがきた。俺はソファーから立ち上がり、タバコを吸う為に、このロビーの中では唯一隔離してある喫煙所へ向かった。その喫煙所はロビーの一番西側に位置している。行く途中で、ナースステーションの前を通り過ぎた。歩きながら、ナースステーションの部屋の中をちらっと見てみると、池田ゆかりがそこに居た。俺は胸にときめくものを感じながら、その場をゆっくりと通り過ぎた。喫煙所の中でタバコを吹かせながら、窓ガラス越しに彼女が部屋から出て来ないか、チェックする。タバコを一本吸い終わっても、彼女は姿を現さなかった。俺は二本目のタバコには火を点けずに、その密閉された居心地の悪い場所から外へ出た。帰り際に、ナースステーションの中を再び覗いてみる。今度は池田ゆかりが一人だけで事務作業をしていた。俺は思い切って、彼女に話しかけた。 |