「おー、竜ちゃん。昨日はどうも」
「こちらこそ」
「でも昨日ゴルフ場へ行った事は社長には内緒にしといてね。竜ちゃんと図面の打ち合わせをしていた事になっているからね」
「オッケイ。でも吉ちゃん、ゴルフ本当に上手くなってたなー。びっくりしたよ」
「竜ちゃんこそ、びっくりしたよ。俺たち、こんなに短期間の内にゴルフが上達するんだから、本腰を入れればすぐにシングルになれるかもね」
「俺もそう思うよ。今日練習に行く?」
「行く行く」
俺たちが話し込んでいると、事務所へ向ってくる誰かの足音が聞こえた。社長に違いない。吉川さんが再び「昨日の事は内緒ね」と念を押した。しばらくすると事務所のドアを開けて、社長らしき人が入って来た。吉川さんが俺を紹介してくれた。
「社長、こちらが図面を描いてくださった加納設計事務所の加納さんです」
「やあー、どうもどうも吉川です」
「加納です。よろしくお願いします」
社長も吉ちゃんと変わらないぐらい身長が高い。ここの家族は皆身長が高いのか・・社長から促され俺はソファーに腰掛けた。
「加納さん、パース見させていただきましたが、なかなか気に入りましたよ。西洋風で、私好みの建物ですわ。このまま図面の方を進めて行ってほしいんですが、問題は予算の方でね。専務から聞いていただいたと思いますが、最高で六千五百万までしかかけられないんでね。予算内で収まるようにお願いしたいんですけどね」
「判りました。でも入札形式を取れば、何とかいける数字だと思いますよ」
社長は幾分安心した様子だった。
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