続いてゆかりさんがドライバーショットに入った。ゆかりさんはいざティーグランドで構えると、今までの優しい色気のある眼差しから真剣な眼差しに目つきが変わった。そこには誰も話しかけられないようなオーラが出ていた。彼女はドライバーをリズムカルに振りぬくと、ボールが着地するまでフィニッシュの形を崩さずにそのままの姿勢で前方を見守っていた。そのポーズと真剣な眼差しが、ものすごく魅力的に見えた。ボールも吉川さんの所より、少し前方にあった。
「ナイスショット」
と皆が声をかけた。最後に中山がティーショットに入った。中山はショットをする前に、コースの攻め方を俺たちに解説した。
「このロングホールは右ドッグになっていて、左側が比較的に広いからフェアーウエイ中央より左側を狙って打たないといけないな。三人のボールで言うと、ゆかりちゃんのボールがベストポジションで、あそこからだったら二打目もスプーンで打っても問題ないが、純と加納のボールの位置だったら、二打目はアイアンで刻まなければならない。俺の飛距離で言うと、俺のベストポジションはゆかりちゃんよりちょっと右側のあの杉の木の辺りかな。二打目を打つ時の事も考えてドライバーショットはしなくてはいけないと言う事を頭の中で考えてから打つようにな」
中山はそう言いながら、ドライバーを打つ体勢に入った。コマみたいに鋭い回転の元にボールは飛び出していった。真っ直ぐに打ち出されたボールは百五十ヤード付近で一旦加速されたように見えた。そして二百ヤード付近でまた更に加速するように見えた。まるで自動車でギアチェンジをしているように見える。ボールは杉の木へ向って真っ直ぐに飛んでいった。ボールはゆかりさんのボールより、五十ヤードほど先で止まった。皆、固唾を呑んで見ていた。俺と吉川さんは言葉も発する事ができなかった。
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