クラブハウスに着くと、中山とゆかりさんがソファーに腰掛け、雑談をしていた。俺と吉川さんの顔を見るなり、中山が俺たちに手を振った。
「おー、これで全員揃ったな。ちょっと俺、支配人に挨拶してくるから、ここで待ってて」
中山はそう言うと、ソファーから立ち上がり、支配人室へ入って行った。
「ゆかりさん、久しぶりです」
俺は彼女に挨拶した。彼女は今日は淡いグリーンのアダパットの服にベージュのキロットパンツを身に着けている。頭には真っ白なキャロウエイの帽子をかぶっていた。いつ見ても、この色気のある彼女の姿には悩殺される。
「こんにちは、加納さん。大分、腕を上げられたみたいですね。中山プロから聞きましたわよ」
「へー、あいつ、そんな事を言ってましたか?」
俺は内心、中山が俺の話題を持ち出してくれた事が嬉しかった。ひょっとしたら、あいつが俺たちの愛のキューピットになってくれるかもしれない。続いて彼女は吉川さんに話しかけた。
「いつも吉川社長にはお世話になっています。この頃、お会いしていませんけれども、お元気にしてらっしゃいますか?」
「えー、もうすぐ、九州アマや県民大会が始まりますから、ゴルフ三昧ですよ」
「それじゃ、また県民大会でお会いできますわね。よろしく言っといてください」
「伝えときます」
俺たち三人が話をしていると、中山が支配人室から出てきた。
「今日の最終組が午後二時半に回るそうだから、その後から回るぞ。その方がいろいろと練習できるからな。それじゃ、アプローチとパターの練習でもするか」
俺たちは中山に促され、練習グリーンに向った。練習グリーンに着くと、中山からパター、サンドウエッジ、アプローチウエッジ、そしてピッチングウエッジを持ってくるように言われた。俺はアプローチウエッジを持っていなかったので、とりあえず九番アイアンを持っていった。
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