「うん、だいぶスイングが綺麗になった気がする。それでいいんじゃない」
「へーそう、判った。有り難う」
俺は今振ったイメージを忘れないように、何回もそのままの姿勢で素振りをした。体にそのイメージが残ったなと思えるようになるまで、十分ぐらい振り続けた。そして何となくその振り方でリズムが掴めるようになると、ボールをセットして振ってみた。何回打ってもボールが真っ直ぐに飛んでいかない。しかもボールの勢いが以前にも増してなくなっている。明らかにパワー不足と言う感がある。それでもゆかりさんから教わった事を、ただひたすら信じて無心でボールを打ち続けた。一時間ほど打ち続けただろうか?ボールが真っ直ぐに飛んでいかない原因が判った。それはテークバックが小さい為に、潜在意識の中にパワー不足を感じ、テークバックからクラブを振り下ろす時に力が入り過ぎて体が微妙にぶれていた。テークバックから体がぶれない事だけを考えて振り下ろすと、ボールは真っ直ぐに飛んでいくようになった。でもボールは益々飛ばないようになった。あっという間に二百球入っていた、かごのボールを打ちつくす。再び、二百球入ったかごを取りに行く。そのかごを持って自分の場所に帰ってくると、吉川さんも全てのボールを打ち尽くしていた。
「竜ちゃん、まだ練習するの?」
「うん、どうも未だショットに納得がいかなくて。吉ちゃん、ちょっとだけ見ててくれる」
俺はそう言うと、七番アイアンでボールを打って見せた。やっぱり飛ばない。
「どう思う?なんでボールが飛ばないんだろう」
「うん、スイングは大分綺麗になったような気がするけどな・・なんかパワーを感じないね。女性がスイングしているみたい」
「でもね、力を入れてしまうと体がぶれてしまうんだよね」
「俺には判んないや。だって竜ちゃんと余りレベルの差は無いしね。後から中山プロに聞いてみたら!」
「そうするわ。俺、中山がゴルフ教室終わるまで、もう少し練習して帰るわ」
「それじゃ、俺、先に帰るね」
吉川さんはそう言うと帰る準備を始めた。俺たちは明日と明後日は別々の時間にゴルフの練習をする事にした。金曜日までに、たたきの図面を仕上げる為に、明日からの二日間は夜、遅くまで図面作業に時間が取られる事が予想された。吉川さんは後片付けが終わると、練習場を出て行った。
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