しばらく三人で雑談をしていると、吉川さんも練習場に現れた。中山が彼に声をかけた。
「おい、純。昨日は加納と一緒に回ったんだってな」
「中山プロ、加納さんの事、知っているんですか?」
「俺たちは小学校時代の同級生だよ。ところで昨日、変な奴と一緒に回ったんだって?」
「橘さんって知りませんか?でもゴルフのハンディーが十八だから知らないでしょうね」
「ハンディー十八って言ったら、丁度ゴルフが判りだして楽しい時期だな。それでどんな事があった?」
吉川さんは昨日のラウンドの一部始終を掻い摘んで中山に話し出した。中山とゆかりさんはその話を聞きながら、笑っていた。俺はそんなに面白い話じゃないだろうと少し剥れたが、一通り話を聞き終わると中山は、
「俺、こいつらにゴルフ場の本グリーンで一度教えてあげたいんだけど、ゆかりちゃん、今週時間取れない?」
と彼女に話しかけた。
「えー、今週でしたら、木曜日が夜勤ですから金曜日の午後からでしたら、大丈夫だと思います」
「それじゃ、金曜日の午後二時から高尾カントリークラブでハーフだけ回ろうか?加納と純も時間取れるか?」
俺はゆかりちゃんと一緒に回れると聞いただけで心がときめいた。剥れた気分などいっぺんに吹っ飛んだ。行けるかどうか迷っている吉川さんに対して、たたき台の図面を金曜日までに仕上げるから、その打ち合わせと言う事で、半ば強引に吉川さんにも承諾させた。
「どうれ、俺は午後七時からゴルフ教室だから飯食ってくるわ。ゆかりちゃん、加納もゴルフに興味を持ち始めたみたいだし、加納のスイング、ちょっとだけ見てくれるかな?」
「私でよければ」
中山は俺たちにそう言うと、練習場から出て行った。あいつは本当にいい奴だ。俺のゆかりさんへの想いを理解して、彼女にそう言ってくれたに違いない。
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