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第1回 第2回 第3回 第4回
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五分の一 (大地の芸術祭) 第十七回

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 地区の人たちが頑張って力を合わせ、この立派な「朝顔の国」を現出してくれたのだと聞く。一輪だけポツンと咲いている朝顔の花には、むしろ寂しさを覚えることもあるとはいえ、清楚、可憐といったようなひきつけられるものがある。だが、百八十株もの多くの朝顔の群れ咲くすばらしさ、豪華さ―これはまた特別のようである。
  最後には松代の「農舞台」へ回った。松代駅の「屋号」の回廊を通り過ぎていった。ただし、時間はすでに五時を回っている。横山さんは「五時半には出発しますので・・・」というわけで、農舞台見物はせいぜい20分程度とされた。トイレ休憩ぐらいの時間である。
「皆さん、これで一応、北回りコースのツアー工程は終わりです」
  松代駅からいざ出発というとき、横山さんはツアー行程が無事に終了したことを確かめるかのように言い、さらに続けた。
「時間も五時半を回ってしまいましたが、最後に一箇所だけ、予定に入っていないんですけど、大変好評な作品がありますので、それを見たいと思います。幸い、帰りの途中にあります。どうでしょう、皆さんのご意見に従うことにしたいと思いますけど」
「そういういい作品があるんだったら、ちっとぐれえ遅くなってもいいじゃないか、のう、皆の衆」
「そうだな、それを見て帰らないっていう手はないな」
「横山さん、そこへ寄ってください」
  すぐに帰りたいと言う人はいなかった。
「では、十日町駅へ帰るのが1時間ほど遅くなりますけど、その作品を見ることにしますから。いいですね」
「文句ないよ」



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五分の一 (大地の芸術祭) 第十八回

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 バスは出発し、しばらくすると名ヶ山集落の近くまで来て、細い山道を登り始めた。対向車が来ると、どちらかが待避場所に停止して相手をやり過ごす必要がある。
 山道の入り口に「こころの花」と書かれた小さな看板が立てられてあった。注意してみないと見過ごしてしまいそうである。「もって帰らないでください」と書かれた看板も見えていた。何を持って帰るなというんだろうかと思った。
「あの看板はいったい、何を持って帰らないでくれっていうんだろうね」
「さあ、ちょっとわかりませんなあ」
 義弟も首をひねっていた。
 やがて、ここから先は道が狭すぎてバスの運行は無理というところまで来た。全員下車して歩き始める。細く曲がりくねった、かなり急な坂道をゆっくり登っていった。口を利く人はいない。“一日中、方々振り回されて、誰もが相当疲れているんだ。もう少しだから我慢しろ”と思いながら、足元だけを見て一歩一歩進んでいった。
 いきなり目の前がパーッと明るくなった感じだった。ブナ林の中に鮮やかに輝く青い花の一群が現れたのだった。
「ウワーッ、きれい」
「うーん、すばらしい」
「これは見に来て正解だったぞ」
 誰もが賛嘆の言葉を惜しまなかった。
 高さ20センチちょっとの、ビーズで作られた数え切れないほど多くの青一色の花。白い花の群れもいくらかあった。それらがビッシリとブナ林の中に咲いていた。この中平(なかだいら)集落の人々の協力の下に、20000本とも30000本ともいわれる多数のビーズの花が植えられたのだという。花は一本一本ブナの木々の根元周辺に差し込まれている。ブナ林なら落ち葉で覆われていることもあり、雑草が生えてこないので、このようなところが選ばれたとも聞いている。「もって帰らないでください」という看板の言いたい意味もようやく納得がいった。
 さあ一通り見物も終了したし、帰りましょうというわけで、足を山のふもとへ向けようとしたときだった。一斉にライトアップがなされた。ビーズの花のいっそうの輝き、花の空間だけが薄暗い中に鮮やかに照らし出されて、おとぎの世界さながらだった。
 「こころの花」を見ることができただけでも十分と思った。最後にこの作品を見る機会がなかったなら、莇平の朝顔という感動を覚えるものもあったとはいえ、この北回りツアーはまことに魅力の薄いものにとどまっていた感じが強い。



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五分の一 (大地の芸術祭) 第十九回

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 「地域の人たちが芸術の力を利用して地域づくりをする」、という観点からするならば、「こころの花」にせよ、また、莇平の朝顔にしても、さらに二回目のときのホワイトプロジェクトにしても、地域の多くの人々が力をあわせて、壮大な「見られる価値」のある芸術作品を作り上げた場合といってよい。かように一のプロジェクトにおいて人々が力をあわせることから、地域再生へ大きく一歩を踏み出しうるものと思われる。
「いやあ、このこころの花は気に入りましたなあ」
「ああ、この前のときに、ホラ、あの白いハンケチくらいの大きさの布が、たくさん空中にハタハタやっていたじゃないか。あれにも似ているよ」
「ああ、そうそう、例のホワイトプロジェクトだったな」
「あれもよかったもんなあ」
「うーん、甲乙つけがたい感じだね」
「おいおい、そもそも芸術作品に甲乙をつけようとする心がいけないんじゃないのかい?」
「そうかな?」
「いやね、製作者は全力を傾けて作ってくれたわけだ。我々としては、どんな作品に対してでも、素直に感動していればそれでいいんじゃないかな。その作品から何を感じるかなんてのは、人それぞれでいいはずだよ」
「じゃあ、批評もいかんか?」
「ああ、そんなのはそれでメシを食いたい連中に任せておけばいいんじゃないかい」
  人々は適当に各人の思うところを述べ合っていた。