| 夜になって、仲良しの愛に電話を入れた。こんな夜―ともすると、ミシッと天井のほうから小さな音が聞こえてきたりして、屋根の抜け落ちる不安におののく夜には、一人じっくり読書するといった気分にはなれなかった。話し相手がほしかった。
愛は小学生のころからのクラスメートである。彼女は利発でいつも年度末には学習賞をもらうのだった。二人の実家は同じ町内だったので、小中学校時代にはともに誘い合って通学し、遊びもした。卒業後もお互いに何でも相談し、話し合ってきた間柄である。久恵は雪掘り人夫を探すことができないことを愚痴った。
「…でね、その吉田さんっていう人は一人で掘るのは無理だから、せめてもう一人探してほしいって言うのよ」
「ウーン、で、その人夫探しの目当てがつかないって言うわけね」
「そう、その人夫が見つからないと、おらのとこなんてもう、いつ潰れてしまうやら分らないほど積もっているんだから、泣きたくなるがね。まったく」
「だけど、そんなんだったら簡単じゃない」
「カンタン?」
久恵は自分が一日中かけて苦しんできたことを愛が「カンタン」と言うのにはびっくりして、狐にでもつままれたような感じだった。
「そうよ。同級生の野郎っ子たちに目を向けるのよ」
「アッ、なるほど、同級生ね。それは良いかも…」
「そうよ。私たちがさ、七十代後半とか八十代とかになっていれば、そのころにはもう男子だって難しいだろうけどさ。私たち、まだ六十九よ。同級生の中にはまだまだ一人前の頑丈なのもいるわよ。雪堀ぐらいできてよ」
|