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「では、早速ですが、ご自分の隣とか、前、後ろなどの近くに居られる方をしっかりと頭に入れておかれるようにお願いします。団体行動では、各人が所属団体の一員であることをしっかりと自覚して行動していただくことが大切です。集合時間などを確実にお守りいただくのが、規律ある中にも楽しい団体行動を作り上げていくものとなるかと思います。
いきなり説教調になってしまいましたが、実は私はまだ学生なんです。教室ではいつも先生に説教されておりますので、こういうところでその鬱憤を晴らしているのだ― まあ、申し訳ありませんが、そのようにでも解釈なさっていてください」
「おいおい、横山さんよ、お前さんは俺達に鬱憤晴らしをすることができるからいいけど、俺たちはどうしたらいいんだね」
すぐに横山さんに冗談半分、不満半分といった言葉を投げかける人がいた。笑い声も起こった。
「ええ、お客様方のその面白くないというお気持ちは、今日一日が過ぎたときには、ああ、楽しかったという気持ちの中に消化されておりますので、これからですね、いろいろの芸術作品を見ていく―それだけで十分かと思います」
「そんなに素晴らしいんかね?」
バスは市街地を通り抜けて、大井田、中条地区をまっすぐに突っ切って、下条地区へ入ると、国道の両側の家々の軒先には、黄色い小旗が揚げられて風にそよいでいた。
「ここの下条地区の人たちは、大地の芸術祭を見に来てくださる方々を歓迎して、このように黄色い旗を振っていてくださるんです」
横山さんの説明を聞いて、改めて通り過ぎていく一軒一軒の軒先に目を凝らした。そして今回の芸術祭を懸命に盛り上げようとしている集落、地区もあることを知った。やがてバスは国道をそれて山地へ向かって走り続けた。 |