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彼女は毛布を持ってくると、私の脚にもかけてくれた。おかげでバスに避難していた一夜というもの、さしたる寒さも覚えないまま過ごすことができた。
タバコが恋しくなると、バスの外へ出ていって一服した。もっとも、ここのところ、年々タバコに対する世の風当りは強くなっている。バスに乗っている十人中、タバコを吸うのは前の家の主人、明さんと私だけである。
明さんの実家は群馬の、雪とはあまり縁のないところらしい。ほれ込んだ妻のトミさんが一人っ子だったこともあって、聟入りして、ここ、トミさんの実家の近くに家を持って商売をしている。したがって、トミさんの実家も同じ集落にあるが、年老いた両親が二人きりで暮らしている。何らかの異変が考えられるときには、彼女はすぐさま実家へ駆けつけることにしているようだ。このときもトミさんは実家へ行っていて、私たちの世話になっているバスには乗っていなかった。 |