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第1回 第2回 第3回 第4回
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中越地震と一枚の絵手紙 第5回

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 清吾家の家庭菜園に対して、市道をはさんだ反対側には建設会社の倉庫がある。倉庫の外壁には、直径五センチほどの細長い鉄パイプがたくさん立てかけられてあったが、それらが次々と道側へ倒れてきて、私は危うく打たれそうになったりした。それらのパイプはたちまち道を塞いでしまったが、片付けているゆとりはない。自分の身の安全さえ疑問であるほどの強い地の揺れだった。
 六時少し前に停電になった。人々は誰もが戸外にとび出してきていた。夕食準備の時間帯と思われたが、一件の火災事故も耳にしなかったのは、不幸中の幸いであった。何しろ、こんな大きい地震の最中に火事にでもなれば、大変な惨事になるのは目に見えている。
 一息つく間もなく、余震第一号が来た。本震よりはやや弱いようだが、それでもやはり強い揺れだ。



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中越地震と一枚の絵手紙 第6回

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 どうしたらよいものか。避難所へ行った方がよいか、いやいや、自宅のそばにいた方がいい――とまどっていると、隣家の萩原さんが声をかけてくれた。
「おーい、みんなでこのバスに乗りこんで、しばらく様子をみていようて」
 彼の指差すところには、いつのまにかミニバスが駐車していた。
「こんな車、いつのまに用意したんだの?」
「ああ、おら、明日、この車で仲間たちと旅に出かける予定だったんだて。まあ、これに乗って様子をみていようて」
「そうかの。じゃあ、遠慮なく乗せてもらうて。こりゃあ、ありがたい、助かったての」
 近所の人たちも次々に乗り込んできて、みんなで十人になった。萩原さん夫妻もいれて男女五人ずつである。



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中越地震と一枚の絵手紙 第7回

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萩原さんは若くして復員後、定年まで運送会社でトラックの運転手をやってきた。長距離運転だったものと思う。そのせいか、アルコールの類はまるで受けつけないし、タバコを吸っているところも見たことがない。まことに人生の優等生である。私のように飲んで、吸って――という人間から見ると、一体どこに生きる楽しみを見出しているのかと疑いたくなるほどである。だが、ここにミニバスを用意して旅に出かける準備をしていたことを聞いたりすると、やはり彼なりの楽しみをよろしくやっているのだということがわかる。また、萩原家の周囲には四季の花々が咲き乱れるし、冬などには玄関にきれいにさきそろった寒菊の、すてきな植木鉢が置かれてあったりして、訪問者をびっくりさせることもある。さらに盆栽なども一人よろしく楽しんでいるらしい。



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中越地震と一枚の絵手紙 第8回

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 バスに乗りこむとすぐ、強大な余震二号がきた。バスがバウンドするばかりに大きく揺れ、乗っている人たちの肩が激しくぶつかりあった。
「キャアーッ!」
「おお、すごい」
 感嘆とも、叫喚ともつかない叫び声が人々の口からとび出した。
 十月も下旬の二十三日ともなると、夜の寒気が身にしみてくる時節である。それでもバスの中なら寒い夜風からは守られる。しかも自宅のすぐそばであるし、誰もが各自の家を見張っていることができる。それだけでもいくらかの安心感はあった。自宅から遠く離れた避難所で、自分の家の様子を案じているよりはうんとよいと思った。
 私の隣の席には萩原のかあさんが座った。彼女はこのミニバスを用意してくれていた萩原さんの連れ合いであるが、昭和九年の生れで、まだまだ元気そのもの。家の内外の整理整とんは実にゆきとどいているし、晴れた朝などにはこまめに布団を乾す。市の中央公民館でやっている生涯学習の明石学級には、彼女は友人と共に料理コースや健康体操コースに参加して、単なる趣味にとどまらず、自らの生活の実益に資するように工夫している。