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中越地震と一枚の絵手紙 第1回

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私の手元に一通の絵手紙がある。平成十六年十一月六日の消印である。宛名と差出人の名の中間には決して上手とは言えないが、勢いのある時で「元気で頑張ってください」とか書かれている。
  ハガキの裏面には下半分のところに、千本しめじといわれる茸が五十本近く、もじゃもじゃと密生していながらも、根元ではしっかりと一ヵ所にまとまっている絵が描かれている。 
  「この度の震災に心からお見舞い申し上げます。皆様、力を寄せ合って頑張って下さい」
  茸の絵の上、ハガキの上部にはこのように書かれている。特に「力」という文字は、大きく書かれている。大きく太く力強く見える表現である。また、「力を寄せ合って」という文句は、茸の絵とうまくマッチしている。千本しめじは一本一本が夫々の方向へ伸びていても、その根元ではしっかりと寄り集っていることからして、文と絵が確実にうまくかみあっている。肝心なところで協力してコトに当る人々の姿を象徴するかのような絵手紙である。



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中越地震と一枚の絵手紙 第2回

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さらに、その文章の終ったところには、真っ赤なもみじ葉が一枚描かれている。その一枚のもみじ葉は、ただ季節感をふくらませてくれるというだけでなく、この絵手紙を色彩的にも生き生きとさせている、キーポイント的役割を果たしているようである。すなわち、そのもみじ葉がなかったならば、茸は黄茶色、文字は黒――内容はともかく、見た目には実に地味な味気ない色合いの絵手紙にとどまっていて、強いてその絵手紙について書いてみようなどとは思わなかったに違いない。その一枚のもみじ葉の真紅な色こそ、この絵手紙に強いアクセントを与えているように思われる。
  ところで、差出人の氏名・Tさんにはまるで心当たりがない。だが、住所が長野県の栄村となっていたことと、それが絵手紙であったことから、ハッと思い当った。



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中越地震と一枚の絵手紙 第3回

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去る十月二十三日朝、十日町市中央公民館の生涯学習教室である明石学級、そこの絵手紙コースの人たちが、長野県栄村の森宮野原交流館へミニバスで絵手紙展を見学に行った。その際にバスに空席があるから参加しないかとの誘いを受けて私もでかけた。
  絵手紙展の会場には訪問者名簿が用意されており、私もそれに記帳した。もっとも、こんなものに氏名を記しても何の意味もないのでは――という気持も強かった。
  例の中越地震の襲来にびっくりしたのは、絵手紙展から帰ったその夕刻だった。
  差出人のTさんは、地震のニュースに驚いて、訪問者名簿に記帳されていた地震被災地域の人たちに、前述のようなお見舞いの絵手紙を差し出してくれたに違いない。
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中越地震と一枚の絵手紙 第4回

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  あの日、絵手紙展から帰って一休みすると、私は再度外出の準備をして玄関に鍵をかけた。その夜には友人Sの結婚披露宴が近くの食堂で催される予定になっていた。共に出席する予定の清吾を誘いに行った。彼は小学校でのクラスメートであるし、家もごく近いことから、気楽に付きあわせてもらっている。Sにしてもクラスこそ異なるものの、同学年である。
  清吾に声をかけて、一歩彼の家の玄関を出たところだった。いきなり、グラグラーッときた。地が大きく波打って見えた。清吾の家の西側へよろよろっと突っ伏すかのように身を寄せていって、家庭菜園のブロックにからくもかがみこんでしがみついた。何が起ったのかわからないほどだった。
  後で聞いたところによると、この揺れが来たとき、Sはすでに会場にいたという。天井から吊りさげられたシャンデリアが大きく揺らいで、すぐさま勢いよく床に叩きつけられるかのように落下する中、Sはどうしたらよいのかわからず、ただ呆然としていたとのこと。それからの人生再出発に当っての記念すべき大切な夜なのに、まことにひどい事態になってしまって、Sには気の毒であった。