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「ええ、そのことは考えないわけではないんです。この町内へ移ってきてまだ三ヶ月ばかりしか経っていませんし、家の中の仕事はみんな嫁がやってくれますし…今のところ、特にやらなくてはならないようなことはないんです」
「そういう状況なら、これは一層強く誘う必要性を感じますね。まあ、今年度は三月いっぱいということで、もうすぐ閉級ですから、来年度、四月からということになりますけど」
柏木の言う「趣味が大きな生き甲斐となって、これからの人生を支えてくれる」―それは、特にこれといって果たさねばならないこともなくて、いつの間にか一日が暮れていってしまって後に何も残っていない、そのような文子自身の現状を考えると強く心に響くものがあった。
「そうですか。では、考えて見ますからハガキでもくださいませんか」
「分かりました。ところで、ふみこというのはどのように書くんです?」
「文学の文です」
「かなではないんですね」
「ほんとはひらがななんですけど、あんまり子供っぽいんで、自分で勝手に変えているんです。今では漢字で通っていますので」
「なるほど、分かりました。それではハガキ書くことにしますので、ひとつ、よろしくお願いします」
健一は受話器を置くと、すぐにハガキを取り出した。ハガキで勧めても相手が応じてくれないなら、そこまでといった気持ちだった。
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