| ミシッと居間の天井から小さなきしむ音がしたりする。久恵はそのたびごとに家が潰れるのではないかという不安におののく。
雪はすでに家の一階を越えて積もっていて、昼間でも電灯のつけっぱなしである。家はまだ二十歳ほどで、例年の積雪事情ならその倒壊を心配する必要はない。
もっとも、一昨年の中越地震―あのときにも家は耐えた。家の中の物が倒れたり、壊れたりするくらいですんでくれた。肝心の家自体は壁がいくらかボロついたりした程度である。だが、やはり強い揺れがあった地震後の家の状態は、地震前のそれと同じとは思えない。相当傷んでいるとみるべきなのであろう。そこへこの大雪である。下手をすれば家屋倒壊にまでいってしまいかねないかと思う。そのことに思い至ると、久恵の不安は恐怖にかわった。
久恵は間もなく七十歳になろうとするところ。亭主は早く逝ってしまい、二人の息子は九州と広島にそれぞれ家を構えている。二階作りのこの一戸建ての家に一人で住むようになってから、すでに十五年は過ぎようとしている。彼女には趣味として読書があり、絵手紙や俳句もある。これらには適度にはまり込んで楽しくやっていることによって、一人で住んでいても特別寂しいと感ずることはあまりない。絵手紙は遠方の友とやり取りし、俳句は句会に参加するのが励みになっている。新聞投稿もよい。
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