心の求めるまま
渚にたたずみ、
海の息吹を受け止める。
波打つ音は耳よりたやすく入り込み、
魂まで響き渡る。
打ち寄せるメロディーはまるで、
揺りかごで聴いた子守歌のようだ。
目を瞑り心を開く。
いつのまにか意識が抜け出て、
再び海に帰ってゆく。
海の世界に下り、魚と戯れる。
水底(みなそこ)に射し込む光を仰ぎ見る。
やがて、海と一体となってゆく。
指先までしみ渡って、
すみずみまで潤おう。
心のよどみは流れ出(い)て、
清らかな湖面のようになってゆく。
深き静けさ、水にあり。
真珠のような希望が宿る。
風が吹き渡り、時間を告げる。
風になびく髪が頬を打ち、
ふと我にかえる。
立つ波が慕わしげに寄せてくる。
ああ、海の麗しさ!
澄んだ心を風が吹き抜けていく。
誰のものにもならないで、
自在に飛び廻る。
木々を揺らし、梢を鳴らす。
波を順(したが)いて来るは風の神(エーオルス)か。
人のしがらみも解いてゆく。
追い風に、勇み立つ。
さあ、船出だ、時代の波に。
進んでいこう、新たなうねりに。
帰路に向かう背中に呼ぶ声がする。
また 来なさい、と−。
疲れてもいいのだ。
傷ついてもいいのだ。
また癒されるから。
|