喫茶店へ向かう道中、依子は、理恵、山岡、小西と並んで歩いていた。俊彦は別の友人たちと一緒にその後ろからついて行っている。依子たちのグループから時折笑い声が聞こえるので、俊彦は話の内容が気になって仕方なかった。両隣の旧友たちは足元もおぼつかない状態で、しきりに議論をふっかけてくる。そんなのどうでもいいじゃないかと思いながらも、放っておけないのが俊彦のよいところだ。だが自分では、放っておけないのは自分が優柔不断なせいだと思っていた。俺が毅然とした態度を取れば、こんなに絡んでくることはないんだ。俺がつい弱気になるのがいけないんだ・・・。ミチルにも言われたっけな。あなたはお人よし過ぎるのよ、って。そんなことを考えながら歩いていると、いつのまにかお目当ての喫茶店に着いていた。前を歩いていた理恵たちはすでに中に入っている。
「わあ、すごい、お洒落な所ね。」「本当、落ち着いていて素敵なところね。ねえ理恵、いつものおしゃべり会、今度からここでやらない?」「いいわね、あとで久美子たちに連絡しておくわ。」「おしゃべり会、というのは?」と山岡が尋ねると、依子が少し恥ずかしそうに答えた。「私たち4人で、月に何回か集まってどうでもいいおしゃべりをしているの。その場所にここを使わせてもらおうかなって。ね、理恵。」「そうなの。女4人寄ったら、かしましいなんてもんじゃないわよ〜。山岡くん、興味あるならご招待するけど、いかが?」「いや、けっこうです。遠慮しておきます。」と山岡が答えると、どっと笑いが起こった。 足元がおぼつかなかった池田は、しばらく他の旧友たちと飲んでいたが、気がつくと皆カウンターで寝てしまっていた。それに気づいた俊彦たちは、マスターに頼んで出してもらった薄手の毛布を全員にかけてやった。ひと仕事を終え、席に戻った俊彦は、依子のいる方に目をやった。
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