「望月くんって、普段ボッとしてるクセにケッコウ派手な真似するじゃん」
「今まで、ずっと追い掛けっこやってたのォ?」
「ンなワケないじゃん」
「でもさァ、このヒトってそ−ゆ−コトやるヒトだったワケ?」
「ね−っ!」
「信じらんな−い!」
「俺のプライバシ−だっ!」
謙司は、いきなり立ち上がって抗議した。その両手には、箸と茶碗がしっかりと握られている。
彼は再びどっかとあぐらをかいて、箸の先に沢庵を突き刺しながら言った。
「それよりな、いい土産話がある。聞きたくない奴は全員出てけ」
「おっ゛我輩″、話題変える気だな?」
「人の話は最後まで聞けよ!」
謙司が覆いかぶさるように言うと、浩二は圧倒されて押し黙った。
「凄いモン見たぞ。大蛇だよ、大蛇」
「ダイジャ?」
「お前の股ぐらのか?」
「化け猫驚いたろ!」
「ハッハッハ!…」
一同は笑いかけたが、謙司は今度は洋平に覆いかぶさってトラのように吠えた。
「話を外らすなっ!」
その声の物凄さに、三人の娘たちは口に手を当てて息を呑んでいる。
一升瓶片手でほろ酔い加減の源三が、板の間の片隅でその様子を見ながらクックックと笑った。
謙司は、鶏肉の煮物をのせたご飯をかき込みながら話を続ける。
「この先を二時間ばかり奥へ行くとな、逢魔ケ池ってのがあるんだ。その畔の土手にいたのさ。長さは五メ−トル近くあったぞ。太さもビ−ル瓶よりずっと太かったな」
「へえ」
浩二と洋平が、謙司の話に関心を示し始めた。
「学者の常識じゃ、日本にはそんな大物はいないことになってるんだぜ」
「バカ、それぐらいのことなら俺達でも知ってるぜ」
「ねえ、このヒトのロマンス…」
百合子がじれったそうに口を挟むのを、洋平が手で制した。
「いいからいいから!それで?」
「あれを生け捕りにすりゃあ一番だが、せめて写真でも撮ってみろ、日本中大騒ぎってことになりかねんぞ。なにしろな、」
謙司の話に夢中になっている浩二と洋平の傍らで、女の子三人組はシラけた顔をしていた。 |