「おい、本当に脱ぐ気か?」
彼が不安になって手を止めると、たちまち京子は権高な声を叩き付けてきた。
「脚痛いの、まだ治ってないわよ」
彼は慌ててマッサ−ジを続ける。
「途中まででいいぞ。十分目の保養になりそうだからな」
「本当に途中まででいいの?ここでさっきの続きやろうと思ったんだけどな、せっかく全部脱ぐんだし」
「お前なあ」
彼は、辺りの様子をうかがわないわけにはいかなかった。
そこは見晴らしのきく場所で、山間を段々状に覆って広がる田や畑のそこかしこに農家が点在しているのが見える。幸い人影は見当たらなかったが、ここは丸見えである。
「それじゃ、途中でやめとくね。上着だけ脱いで、それでおしまい」
謙司はひとまず安堵したが、その表情に明らかに失望が混じっているので、彼女はククッと笑った。
「ほら謙司、一度しか教えないからよく見とくのよ」
彼が当惑気味なのを見て調子付いたのか、京子の口調も高飛車なものになってきた。
忍者装束のようなその衣服は複雑なつくりで、えりやすそが重なり合い、それらの要所要所を括り合わせるひもの結び目は一切露出せず、外物に引っかからぬ工夫がなされていた。これで、どんな激しい動きの戦闘にも耐えられるというわけだ。
謙司は、半ば呆れてその上着を眺めた。これでは、強いてことに及ぼうにも服を脱がせるだけで難渋してしまう。
赤恥をかくところだったと京子が言ったわけである。
やがて、バサッと音をたてて上着が脱ぎ捨てられ、京子の肌が露になった。彼女は、ブラジャ−の代わりに白いサラシを胸に巻き付けて、乳房の動きを押さえていた。
服を通して見る以上に豊満な彼女の体に、謙司はマッサ−ジも忘れて見惚れてしまった。
京子は面白そうに微笑んで、胸に手を当てながら言った。
「やっぱりブラのほうがよかったかしら、真っ赤なDカップ。でも、そんなの見せたら謙司がね」
サラシを強く巻いてあるせいで、胸の隆起が谷間ごと上へ持ち上がっていて、くびれてはみ出した肉が垂れかかっていた。謙司の視線はその辺りに集中している。
「小学生の時にボ−イフレンドがいたんだけど、その子に言ってやったの。男には出っ張ってるものが一つしかないけど、女には二つあるのよって。それからどんどん大きくなっちゃって、本当は今じゃDカップでも足りないくらいなんだから。見せてあげようか?」
謙司はどぎまぎした。 |